CPR番号880万件の流出など、10月前半デンマークニュース7選【2026年】

CPR番号880万件の流出など、10月前半デンマークニュース7選

2026年10月前半のデンマークでは、国民の住民登録番号であるCPR番号が大量に流出するという、在住者にとって見過ごせない事件が起きました。そのほかにも、冬の電気・暖房代の値上げ、新しい国会の開会、AIによるディープフェイクを規制する法案など、暮らしに関わるニュースが続いています。

この記事では、10月1日から14日までのニュースの中から、デンマークに住む人や、これから留学・移住を考えている人に関係の深い7本を選んでまとめます。

※金額はデンマーククローネ(DKK)で表記し、日本円の目安を併記しています(1デンマーククローネ=約23.7円、2026年10月14日時点のレートで換算)。

前号の内容は9月後半のデンマークニュース6選でまとめています。

CPR番号880万件が流出、パスワードは「123456」だった

ハッカー

10月5日、デンマークの住民登録システム(CPR登録簿)から、約880万件分の個人情報が不正に抜き取られていたことが発表されました。デジタル化担当のクリスティーナ・エーゲルン大臣は「非常に深刻な事態」と述べています。

何が流出したのか

流出したのは、名前、住所、CPR番号のほか、婚姻の状況や家族関係などの情報です。デンマークの人口は約600万人ですが、件数がそれを大きく上回っているのは、亡くなった人や国外に転出した人の記録も含まれているためです。つまり、過去に留学やワーキング・ホリデーでCPR番号を取得し、すでに日本に帰国した人も対象に含まれている可能性があります。

原因は小さな会社のずさんなパスワード管理

侵入の入り口になったのは、オーデンセにある従業員2人のIT企業「Pays ApS」でした。この会社は業務上、CPR登録簿を検索する正式な権限を持っていましたが、管理者アカウントを含む少なくとも3つのアカウントで、パスワードに「123456」が使われていました。

不正アクセスは9月10日から9月20日まで続いていました。発覚のきっかけは、検索1件ごとに料金がかかる仕組みの中で、この小さな会社に約1,400万件分という異常に高額な請求が発生したことでした。攻撃自体は発覚の12日前に止まっていたとされています。さらに、犯人とみられる人物は全国紙に「プログラムはAIに書かせた」と話しています。そのプログラムには誤りがあり、1977年生まれの人を検索するはずが1877年生まれを検索していたため、1977年生まれの人のデータだけが抜け落ちていたという、妙に具体的な話も報じられました。

在住者ができる対策「クレジットワーニング」

当局は、CPR番号だけで本人確認をしないよう企業に呼びかけています。個人ができる対策としては、自分の名前で勝手にローンなどを組まれにくくする「クレジットワーニング(kreditadvarsel)」の登録があります。公的ポータルのborger.dkからMitIDでログインして登録でき、あとから自分で解除することもできます。登録者は10月1日時点の25万人未満から、10月7日には約97万人へと急増しました。

CPR番号を持っていて、まだクレジットワーニングを登録していない人は、この機会に登録しておくことをおすすめします。登録は数分で終わり、費用もかかりません。お金を借りる予定ができたときは、自分で解除すれば大丈夫です。なお、すでに日本に帰国していて、有効なCPR番号がなくMitIDにログインできない人は、この方法では登録できません。その場合は、デンマークの機関を名乗る不審なメールやSMSに特に注意してください。

流出した情報を使って、本物らしく見せかけたフィッシング詐欺のメールやSMSが届くおそれもあります。CPR番号や住所を知っている相手でも、すぐに信用しないことが大切です。

MobilePayのアイコンが変わり、2027年1月から「Vipps」に

デンマークで欠かせない決済アプリMobilePayのアイコンが、10月6日に笑顔の「スマイル」マークに変わりました。2027年1月12日には、アプリの名前もノルウェーで使われている「Vipps(ヴィップス)」に変わります。

MobilePayは2022年にノルウェーのVippsと統合しており、今回グリーンランドを含む北欧5か国・地域で名前を1つにそろえます。ユーザー側の手続きは基本的に不要で、連絡先や支払い履歴もそのまま使えます。いつから何が変わるのかはMobilePayの名称変更についての記事でくわしくまとめています。

デンマークの冬の電気代・暖房代が値上げへ

電気

夕方17〜21時の電気の送電料金が上昇

10月1日から、各地の送電会社が冬の料金体系に切り替わり、電気の使用が集中する夕方17時から21時の送電料金(電気料金のうち、電線の利用料にあたる部分)が引き上げられました。

たとえばユラン半島などで約80万世帯に電気を届けているN1では、夕方のピーク時間帯の料金が1kWhあたり99オーレ(約23円)になりました。夏のピーク時は43オーレ(約10円)だったので、2倍以上です。

コペンハーゲン首都圏(Kongens Lyngbyを含む)はRadiusのスピズラスト(17〜21時)が夏47.60オーレ、冬109.85オーレです。

食洗機や洗濯機は何時に回すのがおすすめ?

冬の送電料金は、10月1日から3月31日まで、1日が3つの時間帯に分かれています。N1の場合の料金は次のとおりです(送電会社によって金額は少しずつ違います)。

  • 深夜0時〜6時:1kWhあたり11オーレ(約2.6円)。いちばん安い時間帯です
  • 朝6時〜17時と、夜21時〜24時:1kWhあたり33オーレ(約8円)。2番目に安い時間帯です
  • 夕方17時〜21時:1kWhあたり99オーレ(約23円)。いちばん高い時間帯です

食洗機や洗濯機は、深夜に回すのがいちばんお得です。深夜に回せない場合は、朝から夕方17時までの日中か、夜21時以降に回すのがおすすめです。注意したいのは、スタートの時間だけでなく、運転が終わるまでの時間も含めて考えることです。たとえば16時半に食洗機を回すと、途中から高い時間帯に入ってしまいます。タイマー機能があれば、夜21時以降や深夜に動くよう予約しておくと手間がかかりません。

なお、電気そのものの値段(スポット価格)は1時間ごとに変わるため、実際の電気代は日によっても変わります。契約している電力会社のアプリなどで、その日の安い時間帯を確認するのもひとつの方法です。

家の暖房代も2027年に6〜10%上がる見通し

デンマークの多くの家庭では、自宅にボイラーを置くのではなく、街の熱供給施設でまとめて温めたお湯をパイプで各家庭に届け、そのお湯で部屋を暖める仕組みが使われています。デンマーク語では「フィヨアヴァーメ(fjernvarme)」と呼ばれ、日本語では「地域暖房」と訳されます。アパートに住んでいる人の多くは、この仕組みで暖房を使っているはずです。

公共放送TV2によると、この暖房のお湯を届けている国内10の会社が、エネルギー価格の上昇を理由に2027年の料金を6〜10%引き上げる見通しです。シェラン島南部のプレストーでは、最大40%の値上げになる可能性があります。まだ2027年の料金を発表していない会社も多いため、値上げはさらに広がるかもしれません。

デンマーク国鉄の遅れと電動スクーター規制の議論

オーデンセ〜フレゼリシア間で列車に遅れ

フュン島西部のオーロップ近くで、10月9日(金)に信号関連の施設で火災が起き、その後も倒木や電線のトラブルが重なりました。このため、デンマーク国鉄DSBのオーデンセ〜フレゼリシア間では、普通列車がすべて代行バスに切り替わり、インターシティなどの特急や国際列車も速度を落として運行しています。

DSBは少なくとも10月18日(日)まで影響が続くとしていますが、この日付は暫定で、復旧の見通しはまだ立っていません。フュン島とユラン半島を結ぶ主要な区間なので、この期間に移動する人は、乗り換え案内アプリRejseplanenで最新情報を確認し、時間に余裕をもって出かけることをおすすめします。デンマークの交通アプリの使い分けはデンマークの交通ガイドも参考にしてください。

電動スクーター「禁止すべき」が44%

公共放送DRの依頼で調査会社Epinionが行った調査では、電動スクーターの禁止に賛成する人が44%、反対が31%でした。現在のルールでは、15歳未満の子どもも大人と一緒なら電動スクーターに乗ることができます。交通安全評議会は、全面禁止は行き過ぎだとしつつ、15歳以下は大人と一緒でも乗れないようにすべきだと提案しています。まだ規制が決まったわけではなく、今後の議論が注目されます。

デンマーク国会が開会、首相が新しい法案の方針を発表

Christiansborg Palace

デンマークの国会は毎年10月の第1火曜日に新しい会期が始まります。今年は10月6日に開会し、国王一家も出席する式典のあと、メッテ・フレデリクセン首相が今後1年間の方針を演説しました。首相は「より安全で、より緑豊かで、より公正なデンマーク」を掲げています。

暮らしに関係しそうな主な方針

演説で示された内容のうち、在住者や移住を考えている人に関係しそうなものを抜き出します。いずれも、これから法案として国会で審議される「案」の段階です。

  • 2024年に廃止された祝日「大祈祷日(Store Bededag)」を、2030年に復活させる案
  • ウクライナから避難してきた人に、ほかの外国人と同じように就労の義務を課す案
  • EUから派遣されて働く人の居住許可の申請に、手数料をかける案
  • 止まっていた市民権の付与に関する法案を再び提出する方針

大祈祷日は春にある祝日で、国防費の財源を確保するために2024年に廃止され、大きな議論になりました。復活すれば、デンマークで働く人にとっては休日が1日増えることになります。そのほか、強制送還の対象となった人が暮らす施設に刑務所を設けることや、EUの外に送還のためのセンターをつくることなど、移民政策を厳しくする方向の案も多く含まれています。

ディープフェイクを禁止する法案、デンマークが提出

10月8日、デンマーク文化省は、本人の同意なくAIでつくった本物そっくりの顔や声の映像・音声を共有することを禁じる、著作権法の改正案を提出しました。

この法案の特徴は、有名人だけでなく一般の人も守られる対象になっている点です。ゼニア・スタンペ文化相は「巨大テック企業に、操作されたコンテンツを素早く削除させることが大きな目的のひとつ」と説明しています。風刺やパロディ、社会への批判を目的とした表現は対象外ですが、人の権利や生命、財産に深刻な危険を及ぼす偽情報は例外になりません。

施行は2027年1月1日が目標とされています。AIで誰でも他人になりすませる時代に、「自分の顔や声は自分のもの」という線引きを法律で示そうとする動きとして、海外からも注目されています。

本人の同意なく、有名人や知り合いの顔を使って動画をつくることを、軽い遊びのつもりでしてしまう人もまだいると思います。そうした行為にきちんとルールをつくっていくことは、とても大切だと感じます。一方で、AIの時代に、自分の顔や声などの個人の情報を勝手にAIに読み込ませないためにはどうすればよいのか、という点には、まだ課題が残っていると思います。

精子・卵子の匿名提供、デンマーク倫理評議会が廃止を勧告

デンマーク倫理評議会は、精子や卵子の匿名での提供をやめ、提供によって生まれた人がドナーの身元を知る権利を持てるようにすべきだと勧告しました。委員15人のうち14人が賛成しています。

現在のデンマークでは、身元を明かさない匿名の提供と、子どもが一定の年齢になると身元を知ることができるオープンな提供の両方が認められています。クリスティーネ・ネレマン議長は、DNA検査やオンラインの遺伝子情報登録が広まり、ドナーの身元を秘密にしておくこと自体が難しくなっていると説明しています。

デンマークは、アメリカと並ぶ世界有数の精子の輸出国として知られています。今回の勧告に法的な拘束力はなく、今後国会で議論されることになります。

このニュースについて、筆者の周りのデンマーク人に聞いてみました。「もし精子ドナーから子どもが生まれたとしても、子どもはある程度の年齢になると、自分の父親や母親がどんな人なのか知りたくなるもの。だから知ることができた方がいいよね」という声がありました。あくまで個人の意見ではありますが、うなずける考え方だと感じました。

コペンハーゲンでは、市内の人気の通りにも精子バンクがあったりして、日本と比べるとこの分野はかなり進んでいるという印象があります。それだけに、今回の勧告を受けて制度がどう変わっていくのか、注目したいと思います。

まとめ:10月前半のデンマークニュースは暮らしに直結する話題が中心

2026年10月前半のデンマークでは、CPR番号の大量流出という大きな事件をはじめ、電気・暖房代の値上げ、鉄道の遅れ、MobilePayの名称変更など、日々の暮らしに直接関わるニュースが目立ちました。国会の開会で示された祝日の復活や外国人に関する方針、ディープフェイクの規制、精子・卵子提供のあり方など、これから議論が本格化するテーマも多くあります。

CPR番号を持っている人は、クレジットワーニングの登録や、不審なメール・SMSへの注意を忘れないようにしてください。次回は10月後半のニュースをお届けします。

前回の記事を読みたい方は下記からご覧いただけます。