
2026年9月前半のデンマークでは、暮らしや社会に関わるニュースがいくつも重なりました。ここでは直近2週間ほどの間に話題になったトピックを6つに絞ってまとめてお届けします。
コペンハーゲンの住宅価格が2年半ぶりに下落
日本でも利上げのニュースが話題になっていますが、デンマークでも利上げが実施されています。
デンマーク国立銀行(Nationalbanken)は2026年6月、3年ぶりとなる利上げを実施しました。政策金利は1.60%から1.85%へ、貸出金利は1.75%から2.00%へと引き上げられました。
さらに、この記事を書いている直前の9月11日にも2回目の利上げが行われ、政策金利は2.1%まで上昇しています。ECBの利上げに追随した形で、デンマーククローネをユーロに対して固定するための措置ですが、住宅ローンを組んでいる方には利上げが続くとなかなか気が抜けないでしょう。
この金利上昇の影響もあり、コペンハーゲン市内の分譲アパート(ejerlejlighed)の平均価格は、2026年8月に前月比0.5%下落しました。
コペンハーゲンでアパート価格が下落したのは、2024年3月以来およそ2年半ぶりのことです。
あわせて、7月の売買件数は前月比24%減、前年同月比では40%減となっており、需要そのものが落ち着いてきている様子もうかがえます。
住宅家賃補助、恒久化へ
政府は期限付きだった家賃補助制度を恒久化し、予算を1500万クローネから3000万クローネへ倍増する方針です。法案は今週から意見公募(パブリックコメント)の段階に入りました。
小さなニュースに見えますが、デンマーク式の「手厚い福祉」路線を財政的に裏打ちする動きで、住宅政策が一時しのぎから恒久制度へ格上げされた点が注目です。
背景には、ホームレス状態から抜け出せない人が家賃負担で再び住居を失ってしまう「回転ドア現象」への危機感があります。ヤコブ・マーク住宅相は「この制度はうまく機能している」と実績を強調しています。
デンマークらしい「まず試してみて、効果があれば恒久化する」というやり方が表れているニュースだと思いました。
就労許可制度が変更、2027年から新しい仕組みが始まります
デンマークの就労許可制度についても、大きな変更がありました。
2027年1月から、認定を受けた企業が対象国の労働者を年収32万2000クローネの基準で採用できる新しい枠組みが始まる予定です。日本国籍の方も対象になるため、いつかデンマークで就職したいと思っていた方には絶好のチャンスです。
詳しい対象国や条件については、今後発表されていく予定ですが、現在の情報は以前の記事で詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
ノボノルディスクが社名を「Novo」に変更、新CEOのもとで新体制へ
デンマークを代表する製薬大手ノボノルディスクは2026年9月14日、社名を「Novo」に改め、企業文化やブランド戦略を刷新すると発表しました。なお、「Novo」への変更はあくまで日常的に使うブランド名としての変更で、法人としての正式名称「Novo Nordisk A/S」は変わりません。
背景には、肥満治療薬市場でライバルのイーライリリーとの競争が激しくなっていることや、投資家からの成長戦略への期待があります。同社は2026年9月21日にキャピタルマーケットデーを予定しており、そこで詳細な戦略が語られる見通しです。
CEOのマイク・ドゥスター氏は2025年8月に就任し、就任からおよそ1年をかけて今回の新体制発表にこぎ着けた形です。前CEOのラース・フルーガード・ヨルゲンセン氏は2025年に退任を発表していました。同社はコスト削減のため、2025年に9000人規模の人員削減を発表してもいます。
世界一幸せな都市はコペンハーゲン、Happy City Indexで話題に
2026年版のHappy City Indexで、コペンハーゲンが世界一幸せな都市に選ばれたことも、引き続き話題になっています。上位10都市のうち6都市を北欧の都市が占めるという結果で、暮らしやすさという観点からもデンマークが注目される機会となりました。ランキングの詳しい中身については、以前の記事で紹介しています。
学力危機に政府が動く:学校での携帯電話「完全禁止」へ

PISA(学習到達度調査)で過去25年で最悪の成績を記録したことを受け、デンマーク政府は6〜16歳の児童・生徒を対象に、授業中だけでなく休み時間も含めた学校での携帯・スマート端末の「完全禁止」を導入する方針を発表しました。
PISA調査でデンマークが過去最悪の読解力・数学力、学校でのスマートフォン排除の動きが加速
OECDが2026年9月上旬に発表したPISA2025の結果で、デンマークの子どもたちの読解力・数学力が過去最低水準まで落ち込んだことが明らかになりました。読解力は460点で、前回2022年の調査から29点の下落、数学は471点で前回489点から18点の下落となっています。OECD平均に近い水準まで落ち込んでおり、現地では「危機的」という表現で報じられています。
昨年デンマークのフリースクールに視察した際は学校の教室の入り口にスマートフォンを入れるボックスが設置されており、授業中はさわれないような仕組み作りはされていましたが、このような結果に政府も動いたという流れになります。
肥料規制の新法案をめぐり、全国で農家によるトラクターデモ

2026年9月1日、農地からの窒素排出を制限する新しい法律に反対する農家たちが、トラクターでコペンハーゲンの国会議事堂前に集結しました。集まったトラクターはおよそ300台にのぼり、コペンハーゲンだけでなくオーフスなど各地でも抗議活動が行われました。
農業団体側は、根拠となるデータが不十分なまま拙速に法制化が進められていると批判し、規制が実施されれば農家に大きな損失が生じると訴えていました。しかし法案は9月3日、賛成119票・反対34票という結果で可決され、2027年から新しい窒素排出規制の仕組みが導入されることになりました。
余談ですが、「ジェレミー・クラークソン農家になる」を全シリーズ見ている筆者としては、イギリスの農業も大変そうだなと思っていたところです。また、フォルケホイスコーレで民主主義とは学んだ後に見たデモクラティックなニュースだったためこちらに取り上げました。
まとめ:デンマークの暮らしを取り巻く変化を感じた2週間
住宅価格の潮目の変化、大企業ノボノルディスクの再編、教育現場が直面する課題、農業政策をめぐる反発など、2026年9月前半のデンマークでは暮らしや社会のあり方に関わるニュースが立て続けに動きました。
お隣スウェーデンでは選挙が2026/09/13に実施されて大きな話題になっており、気になっているところでもあります。
世界一幸せな都市に選ばれた一方で、教育や産業の分野では簡単には解決できない課題も浮き彫りになっており、今後の動向にも注目していきたいと思います。




