
デンマーク・コペンハーゲンで毎年開催される世界最大級のデザインフェスティバル、3daysofdesign。北欧デザインの最前線を体感できるこのイベントに参加するために、日本から多くのデザイナーや建築家、クリエイター、そのサポートスタッフが毎年訪れます。
しかし2026年現在、在デンマーク日本国大使館から重要な警告が届いています。コペンハーゲン市内でスリ被害が多発しており、日本人をはじめとするアジア系旅行者が特にターゲットにされているというのです。
この記事を書いている私自身、デンマークに住んでいます。デンマークが本当に治安の良い国だということは、生活しているからこそよくわかります。それだけに「まさかここで」という油断が生まれやすいのも事実です。実際に私の周りでは、3件のスリ被害(未遂含む)が起きています。これは決他人事ではありません。
この記事では、大使館の公式情報と実際の体験談をもとに、スリの手口・多発エリア・具体的な対策、そして万が一被害に遭った場合の対応を詳しく解説します。出発前にぜひ読んでおいてください。
デンマークは安全な国、だからこそ狙われる
デンマークは世界幸福度ランキングの常連で、北欧の中でも治安の良さで知られています。コペンハーゲンを歩いていると、夜でも比較的安心して出歩けますし、街全体に穏やかな雰囲気があります。
しかしその「安全なイメージ」が、逆に観光客を無防備にさせています。
在デンマーク日本国大使館(2026年5月付通知)によれば、近年このような「安全な国だから大丈夫」という意識から警戒心が薄れた観光客を標的にしたスリが急増しています。特に気をつけてほしいのが、アジア系の見た目というだけでターゲットにされやすいという現実です。
デンマークは地理的にヨーロッパの中心に近く、シェンゲン協定域内であるため他のヨーロッパ諸国からの移動が非常にスムーズです。隣国では移民・治安問題が深刻化しているケースもあり、組織的なスリ集団が各地から流入しているとも言われています。観光客が多く集まる場所では、アジア系の旅行者が「慣れていない・警戒心が低い・現金を持っている」とみなされ、狙われやすい傾向があります。
3daysofdesignの期間中は特に注意が必要です。デザイン関係者や旅行者が大勢訪れ、街全体が賑やかになるこの時期は、スリ犯にとっても絶好の機会になります。
実際に起きた3件の被害|私の友人たちの体験談

「スリ被害なんて自分には関係ない」と思っているかもしれません。でも私の周りだけで、こんなことが起きています。
体験談① コペンハーゲン中央駅での「親切な手伝い」
友人Aさんは、日本からの飛行機でコペンハーゲン空港に到着した直後、スーツケースを持って中央駅の構内を歩いていました。エレベーターか階段を使おうとしたとき、男性が声をかけてきました。「スーツケース、手伝いましょうか」という、一見親切な申し出でした。
Aさんは素直に手伝ってもらったのですが、その後財布を確認すると、中に入れていた現金がなくなっていました。手伝ってもらっている隙に、財布から現金だけを抜き取られていたのです。幸いクレジットカードとパスポートは無事でしたが、到着してすぐという最も気が緩んでいるタイミングを狙われました。
スーツケースを持っていると両手がふさがり、バッグに気を配る余裕がなくなります。「手伝いましょうか」という声かけは親切心からではなく、その無防備な状態を作り出すための手口だったのです。
体験談② ストロイエからニューハウンへの移動中(2025年夏)
友人Bさんは、貴重品管理に気を使うタイプの旅行者でした。首から下げるポーチを使い、パスポートと主要なクレジットカードは携帯のケースに入れておくという工夫もしていました。
被害が起きたのは、カフェで食事を終えてお会計をした後のことです。首のポーチをリュックサックの前面にある小さなポケットに移し替え、ストロイエ通りからニューハウンに向かって歩き始めました。
ニューハウンに到着したとき、何となくリュックを確認すると、チャックが開いていて財布がなくなっていました。ストロイエからニューハウンまで歩く間に、リュックを開けられ財布だけを抜き取られていたのです。
パスポートや予備のカードは別の場所に入れていたので最悪の事態は免れましたが、Bさんは「本当に冷やっとした」と話していました。財布を入れ替えた瞬間を見られていたのか、歩いている間にずっと後をつけられていたのかはわかりません。いずれにしても、リュックの外側ポケットは完全にノーガードだということです。
体験談③ ストロイエの雑貨店での未遂(2026年5月)
3件目は、コペンハーゲンに約2年住んでいる友人Cさんの話です。観光客ではなく現地在住者で、いわゆる「旅行者っぽい格好」もしていませんでした。
ストロイエ通りにあるSøstrene Grene(フライングタイガーに似た、かわいい雑貨がたくさん並んでいる北欧発のお店で、日本でも一時期展開していました)でショッピングをしていたとき、チャックのないトートバッグを使っていたCさんは、バッグの中から何かを取ろうとしている手に気づきました。
すぐに「何を取ったの」と直接声をかけると、その人物は慌てて店外へ逃げていきました。2年の在住経験があっても、チャックのないバッグを持っているだけで狙われたのです。
この3件に共通しているのは、全員がアジア系だということです。たまたまかもしれませんが、私の周りでこれだけの件数が起きているという事実は、アジア人が標的にされやすいという傾向を示していると思います。
スリが多発するエリア:3daysofdesignの動線と重なる場所ばかり
大使館が公式に名指しした危険エリアは、3daysofdesignの参加者が必ず通る場所と完全に一致しています。
コペンハーゲン中央駅
空港からのアクセスに必ず使う拠点。体験談①が起きた場所でもあります。到着直後は荷物が多く、時差や疲れで注意力が落ちているため特に狙われやすいタイミングです。会場間の移動でも頻繁に通過する場所なので、滞在中ずっと油断できません。
メトロ・公共交通機関の車内と駅構内
移動中の混雑した車内はスリの定番の舞台です。乗り換えを急いでいるとき、スマートフォンで地図を確認しているとき、そういった「別のことに集中している瞬間」が狙われます。
ストロイエ通り

体験談②と③が起きたエリアです。ヨーロッパ最長の歩行者専用商店街で、ショッピングや散策を楽しむ観光客が絶えません。人混みの多さはスリにとって好都合で、次々と人が入れ替わるため犯行後に逃げやすい環境でもあります。
ニューハウン

カラフルな建物と運河が美しい、コペンハーゲンを象徴する観光スポット。写真撮影に夢中になりやすい場所で、荷物への注意が自然と薄れてしまいます。体験談②のBさんも、ここに着いたときには被害がすでに起きていました。
アマリエンボー宮殿周辺
衛兵交代式など観光客が集まる場所で、見物に集中している隙を狙った被害が報告されています。
最も危険な手口:集団犯行と「善意に見せかけた接触」
大使館が特に警告しているのが、組織的な集団によるスリです。典型的なパターンは次の通りです。
東欧系の女性が観光客に親しげに話しかけてきます。道を聞く、地図を見せる、写真撮影を頼む。どれも自然に見える口実です。こちらが対応しようとしている間に、同じグループの別の人物がバッグや上着のポケットから貴重品を抜き取ります。気づいたときには犯行グループはすでに離れています。
体験談①のような「荷物を手伝う」という接触も同様の手口です。善意に見えるからこそ断りにくく、その心理的な隙が利用されます。
見知らぬ人に声をかけられたとき
特に旅行者に積極的に近づいてくる場合は、歩きながら「Sorry, I don’t know」と答えるか無視してそのまま立ち去ることが最善です。失礼に感じるかもしれませんが、自分の身を守ることを優先してください。
5つの具体的なスリ対策
1. 貴重品は体の内側に
財布・パスポート・スマートフォンは、衣服の内ポケットに入れて携帯するのが最も安全です。
ショルダーバッグやトートバッグは外からアクセスしやすいため、貴重品の保管には向きません。どうしてもバッグに入れる場合は、チャック付きのものを使い、リュックの外側ポケットや前面の小ポケットには絶対に入れないでください。体験談②のBさんがまさにその失敗をしています。
デザイン系の方はトートバッグを愛用する方も多いですが、コペンハーゲン滞在中は貴重品の管理方法を変えることを強くお勧めします。
2. バッグは体の前で抱える
人混みの中では、ショルダーバッグやリュックを体の前に回して持ちましょう。背中のリュックは自分では見えないため、知らない間にチャックを開けられます。体験談②がまさにその被害例です。3daysofdesignの会場内や移動中も「前抱え」を習慣にしてください。
3. 荷物を置きっぱなしにしない
レストランの椅子の背、カフェのテーブル横、電車の網棚、食事中はバッグを膝の上か足で踏んでおく習慣をつけてください。
4. 手続きや撮影中も意識を切らさない
ホテルのチェックイン、メトロのチケット購入、両替、他のことに集中しているときが狙われるタイミングです。3daysofdesignの会場で写真を撮るとき、バッグを地面に置いていませんか?撮影中も荷物は体から離さないことを意識してください。
5. 不審な接触にはすぐ距離を置く
声をかけてきた人物が本当に親切なのかを疑う意識を持ってください。特に見知らぬ人から荷物を手伝う申し出があった場合は、丁重に断ることが大切です。また、人ごみの中で誰かに体が触れたと感じたら、すぐにバッグや貴重品を確認する習慣をつけましょう。
もし被害に遭ったら:まず警察署で被害申請を
スリ対策をしっかりしていても、万が一のことは起きます。被害に遭ったと気づいたとき、最初にすべきことは警察署に行って被害申請をすることです。これは旅行保険やクレジットカードの付帯保険を使うために不可欠な手続きです。申請をしないと、保険の支払いが下りません。旅行中で気持ちが落ち込んでいても、この作業だけは必ず先に済ませてください。
コペンハーゲン中央駅の構内に警察署があります。私自身も行ったことがあるのですが、入口で一度止められ、セキュリティ確認のため扉の手前で待機するような形になっています。その後、内側の扉が開いてオフィスに入れてもらえます。英語で対応してもらえるので、「財布が盗まれました」「携帯を盗まれました」と伝えれば手続きを案内してくれます。
被害申請を済ませたら、クレジットカードを盗まれた場合は各カード会社に連絡して利用停止の手続きをしてください。
パスポートを盗まれた場合は特に注意が必要です。コペンハーゲンで新しいパスポートを発行してもらうことはできません。日本国内で作成されるため、デンマークで受け取るまで約4週間かかります。そのため多くの場合は「帰国のための渡航書」を発行してもらうことになります。これは緊急帰国のために使える書類ですが、日本への直行ルートのみ使用可能で、他国への渡航には使えません。3daysofdesignの後に他のヨーロッパ諸国を周遊する予定がある場合、その旅程をすべてキャンセルして帰国便に変更しなければならない可能性があります。フライト変更費用やホテルのキャンセル料など、経済的な負担も相当なものになります。
パスポートの盗難・紛失の場合は、在デンマーク日本国大使館に連絡してください(電話:+45 33 11 33 44)。住所はPilestræde 42, 3. sal, 1112 Copenhagen Kです。
出発前にやっておきたい準備
書類とデータのバックアップとして、パスポートの顔写真ページをスキャンまたは撮影してメールやクラウドに保存しておくこと、クレジットカード各社の緊急連絡先をメモしておくこと、大使館の電話番号を携帯に登録しておくことをお勧めします。
持ち物の準備としては、チャック付きの内ポケットがある上着やジャケット、パスポートをしまえるネックポーチが役立ちます。財布は必要最低限のカードと現金だけに絞り、旅行保険の内容(スリ・盗難がカバーされているか)も確認しておきましょう。
スマートフォンの設定についても、Googleマップのオフラインマップを事前にダウンロードしておくと、歩きながらスマホを出す頻度が減るので盗難リスクを下げられます。
FAQ

デンマークはヨーロッパの中でも特に危ない国ですか?
いいえ。デンマークはヨーロッパの中では治安が良い国です。ただしその安全なイメージから警戒心が薄れた観光客。特にアジア系の旅行者がターゲットにされているのが現状です。安全な国でも、観光地・繁華街・公共交通機関でのスリは起きています。
ホテルのセーフティボックスにパスポートを預けるべきですか?
一つの選択肢ですが、パスポートは原則として常時携帯が求められています。コピーをバッグに入れ、原本はホテルに預けるという方法でリスクを分散する方法もありますが、国や状況によっては原本の提示を求められることもあります。旅行保険の条件も確認した上で判断してください。
3daysofdesignの会場内は安全ですか?
会場内は比較的安全ですが、オープンなショールームや人が密集するイベントスペースでは油断禁物です。荷物を置いたまま別のブースを見に行くことは避けましょう。
被害に遭った場合、旅行保険は使えますか?
ほとんどの旅行保険では携行品盗難がカバーされています。ただし補償には警察への被害申請が必要なケースがほとんどです。保険証書を事前に確認し、申請方法を把握しておきましょう。クレジットカードに付帯している旅行保険も同様に警察の書類が必要です。
現金を持たずカードだけにすればリスクは下がりますか?
コペンハーゲンはカード社会なので、現金を最小限にすることでリスクは下げられます。ただしカード自体も盗難対象になるため、スキミング対策付きのカードホルダーの使用も検討してください。
まとめ
コペンハーゲンは本当に素晴らしい街で、3daysofdesignはデザインを愛するすべての人にとって特別な体験になります。私自身、この街での生活が好きですし、治安の良さを日々実感しています。
それでも私の周りでこれだけの被害が起きているという現実を、できるだけ多くの方に知ってほしいと思います。アジア人というだけでターゲットにされやすい状況がある以上、日本からコペンハーゲンを訪れる方には事前にしっかり備えてほしいのです。
対策はシンプルです。貴重品は体の内側へ、バッグは前に抱える、荷物から目を離さない、不審な接触にはすぐ距離を置く、これだけで被害に遭うリスクは大幅に下がります。
万全の準備を整えて、コペンハーゲンで最高のデザイン体験を楽しんでください。


